今日のランチのお相手は、3年生のY。
Yは厳(いか)つい大男で、目つきも鋭く、ちょっと怖い感じのあんちゃんだ。
3年生は自宅学習期間に入っている。だからランチルームにYの姿を見かけるのはちょっと変な感じだ。
「どう?元気にやってる?」とおれ。
「うん。元気だよ」とY。
「最近何してんの?バイト?」とおれ。
「うん。あとね、自宅学習期間になったし、進路も決まったし、中学校の先生に挨拶まわりしてんだ。母校の先生たちは色んな中学に転勤になってるからさ、ひとりずつ、訪ねて歩いてんだよ。津川とか新潟とかね。」
「挨拶回りって、お前、お礼参りのことじゃないだろうな。」とおれは思わず言った。Yは中学校時代、暴れん坊で、先生方の手を随分わずらわせたと聞く。お礼参りとは、ちょっと穏やかではない、と思ったんだ。
「何言ってんだよ、違うよ。お世話になりました、進学が決まりました、ありがとうございますって挨拶してんの。」Yはこう言うとハンバーグをかじった。
おれは絶句した。
「そりゃ先生方も喜んだろう」隣で食べていたO先生が口を挟む。
「うん。みんなびっくりしてたよ。一番お世話になった生徒指導の先生はさ、太ってたのに二十キロも痩せちゃって、糖尿なんだってさ。体を大事にしてくれよって言ってきたよ」とY。
Yは敬和に来てからも、1年、2年まではちょっと手のかかる生徒だった。そのYも、三年生になると、すっかり成長して驚いたものだが、変われば変わるものだ。もちろん、もともと気のいい奴ではあった。
「ところでお前、何で学校に来てんだ?補修?」とおれ。
「違うよ、図書館の整理の手伝いに来たんだ」とY。
司書の先生は女性である。一人で重たい雑誌を運ぶのは大変だから手伝ってやろうとやってきたのだった。
おれはすっかり感心してYを見る。
Yはうまそうにハンバーグを口に運んでいる。
敬和のランチはいつもご馳走だ。
でもね、ランチのご馳走は料理だけじゃないんだよ。
(T.H)