ワカメごはん・サバ塩焼・切干大根煮・キムチ汁・牛乳・オレンジ
鮭の塩焼きは特別感を求めて食べるものではない。
踊り上がり、高揚して食べるものではない。そこにあるのは当たり前の日常に組み込まれた「こういうのが良いんだよ」感である。
それは例えるなら疲れたサラリーマンが夜たどり着いた老夫婦が切り盛りする食堂で橙のランプに照らされる優しさであり、あるいは土曜日の遅めの昼食に扇風機のぬるい送風を浴びながら日本家屋で食べる幼少の記憶である。
それぞれの日常の中の記憶に密接に結びついたこの料理は、かけがえのない日々の象徴である。私たちが失い、そして取り戻したいと願っているそれぞれの日常が、鮭塩焼きを通して浮かび上がる。いわば思い出の幻灯機なのである。
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